ガラスのタンポポ
みのりを起こさないように静かにベッドから抜け出し、脱ぎ捨てられたままのワイシャツに袖を通す。


テーブルの上に置かれた部屋の鍵を取り、アパートの扉を閉めた。


チャリン一一一


慣れた手つきで郵便受けへ鍵を落として。


頭の中には、数時間後に打つであろうメールの下書きと。


鮮やかな黄色いタンポポのかんむりの色だけが、くっきりと焼き付いていた。


そうなんだ。


俺はあのタンポポのかんむりを受け取りたいだけ。


奏来の手から。


受け取りたい、それだけ…。
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