ガラスのタンポポ
「わぁ♪キラキラしててキレー…」


しばらく店の前から動かないと思ったら、奏来は独り言のように小さく呟いた。


視線の先を追うと、どうやらビーズ細工が気に入ったらしい。


「どれ?」


「あのね、あの黄色のビーズで作ったヤツ、タンポポみたいでかわいいでしょ?」


「あの指輪?」


「うん。おばあちゃん見たら喜ぶんじゃないかなと思って」


「買ってやるよ」


「あ、ううんっ!おねだりじゃないの!ただ、そうなんじゃないかなって想像しただけで…」


「いいよ、買う」


黄色いビーズの指輪を持ちきれいにラッピングしてもらうと、奏来の小さな白い手に乗せた。


「……」


「あのな、奏来。難しく考えんな。アイスやケーキと同じ、簡単に手に入る物はいくらでもある。オトばあの記憶のように失われていく物ばっかじゃないんだよ」


「う、うん…。翔ちゃん、アリガト…」


ぎこちなく頭を下げる奏来はやっぱり誰より愛しくて。


できるものならここで今すぐ抱き締めてやりたい。


でも、幼なじみにふさわしい距離ではないから、オレはグッとこらえ、奏来の頭に手を乗せる。
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