ガラスのタンポポ
奏来は大切そうに兄貴に右手を差し出す。


兄貴は笑って、


「良かったな、奏来」


チラッとだけオレを見た。


「ちょうど取引先との商談が終わったところなんだ。ちょっと早いけど、これから会社に戻って祝杯会なんだ。奏来達は?これからどこか行くのか?」


「別にどこってアテはないんだ。ただブラブラしてるだけ」


「そっか。じゃあ、翔、コレ」


言って兄貴は財布から一万円抜き取り、オレに渡した。


「せっかくなんだから、夜まで奏来を遊ばせてやるといい。足りるか?」


「いいよ、小遣いせびりに来たんじゃなく、奏来が指輪を見せたがったから…」


「いいから持っとけ。じゃあ、俺行くから。奏来、今日はたくさん遊ぶといいよ」


「うんっ、聖ちゃんっ」


「頼んだぞ、翔」


「うん」


「バイバーイ、聖ちゃん!」


兄貴は片手を上げ、同僚と公園の外へ出て行った。
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