ガラスのタンポポ
橘が悔しそうに顔を歪める。


橘だって、わかってるはずなんだ。


本当にオレの事を好きでいるとしたら、オレが奏来に投げかける言葉、仕草にどんな意味があるのか。


「もうやめろよ、見苦しい。二度と奏来に近づくな。オマエ1人ぐらいどうにでもなるって、言ってる事わかるよな?」


橘はとうとう泣き出し、校舎裏を走って行った。


重い空気がオレと奏来を覆う。


しばらくお互い目も合わさず、いつからか降り出した雨にされるままでいたが、奏来の小さな声がその沈黙を破った。


「…翔ちゃん…手…」


奏来はポケットからハンカチを取り出し、オレの手にそっと巻きつけた。


「ごめんなさい、翔ちゃん…。ソラのせいで…」


「違うんだ、奏来。オレが悪かった。嫌な思いさせてゴメン。大丈夫だったか?」


オレが奏来の頭から長い髪へ手を滑らせるとコクンと小さく頷いた。
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