ガラスのタンポポ
そうだ、オレのせいなんだ。


休みの日に誘ってデートして。


つき合ってるって誤解を招いて。


橘を振ったせいで、奏来を訳もなく追い詰めた。


全部オレのせいだ。


兄貴だったらこんな思いさせないんだろうな、なんて、どうして今そんな事を思うんだろう。


右手に巻きつけられた淡いピンクのハンカチに血が滲んでいくのを見ながら、ぼんやり考えた。


オレのこの手の傷のように、奏来の心も傷ついただろうか。


だとしたら、その傷は誰にも埋めさせない。


たとえその相手が兄貴だとしても。


オレが。


今ここにいるオレだけが奏来の味方、守ってやるべき男。


そう思うと小さな奏来が雨に濡れたかすみ草のように思えて。


オレは。


オレは、奏来をそっと抱き寄せた。
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