ガラスのタンポポ
図書館に着くと、しばらく歩いたせいか夏服が汗ばんでいた。


「奏来、地下の売店の喫茶コーナーでジュースでも飲まない?」


「うんっ」


オレはコーラを、奏来は迷った挙げ句オレンジジュースを手に取って、丸テーブルに向かい合って座った。


「もうすぐ夏だね?」


「あー…夏休み前にテストかぁ〜」


「翔ちゃんの成績なら問題ないよ」


「奏来は少し数学が弱いからな。今度一緒に勉強しようぜ」


「うん!…あ、電話だ」


鈍いバイブ音を鳴らす奏来の白いケータイには、オレの買ったガラスのタンポポが揺れている。


ほら、な。


奏来はオレんトコにいる。


ストラップになったガラスのタンポポを見る度、安心と嬉しさが込み上げた。
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