ガラスのタンポポ
車椅子は奏来の手から兄貴に渡り、そのまま全員車に乗り込んだ。


目的地は奏来の希望通り海で。


梅雨の合間の快晴はオレの気持ちと重なる事はなくて。


助手席で笑う奏来やおばさん、オトばあの笑い声が遠くて。


来なければ良かったんじゃないか、って思うけど。


オレもみんなに合わせて薄っぺらく笑いながら、デジカメのシャッターを切るんだ。


“こっち向いて笑えよ”


って、心の中で叫びながら。


「母さん、もうすぐ着くよ」


兄貴がオトばあに話しかけると、車窓の左側に砂浜が見えはじめた。


「わぁ!!海、海!!」


はしゃぐ奏来を見て沈んでしまうオレって、器が小さいのかな…。


笑顔の奏来がいるんだ、オレも楽しまなきゃ…だよ、な。
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