ガラスのタンポポ
「奏来、海に着いたら貝殻拾いレースだからなっ」


「うんっ、翔ちゃん!」


そうだよ。


今、奏来は他の誰のモノでもない。


オレの奏来だ。


だから落ち着こう、意識し過ぎるな、頭を冷やそう。


「とーちゃーっく!!」


奏来が一番に車を降り、ワゴンのドアを開け、オトばあを招く。


「おばあちゃん着いたよ!海だよ!」


「ハイハイ。今おばあちゃんも行きますよ」


おばさんとオレと2人がかりで車椅子を降ろし、海沿いのコンクリートへ移動させる。


「困ったね、車椅子、砂に沈んじゃうから、おばあちゃん海に近づけないね?」


「平気だよ」


兄貴が軽々とオトばあを背負い、スニーカーが汚れるのも気にせず砂浜を歩き出した。


オトばあの嬉しそうな声が人気のない海岸に響く。
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