黒紅花
「もう忘れたの・・・」

その時、私の声に重なる
女性の大きな声が聞こえた

その声は、ひさぎの名を呼ぶ

「ヒサ
 やっぱり、ヒサだぁ」

貴方の名前を呼んだのは
いつかの女性・・・

そう、ひさぎの元彼女

「何、ヒサも
 あの映画、観に来たの?」

彼女が指差す方向には
映画・宣伝用の大きな
パネルが置かれている。

パネルを見つめる、ひさぎ

あっ、閉まっちゃう・・・

閉まる、エレベーターのドア

「ああ、お前も?」

「うん、友達と待ち合わせして
 たんだけど、彼女ったら寝坊
 して遅れるらしくて・・・
 
 そうだ、ヒサ
 映画のチケット持ってる?」
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