黒紅花
「あいつ、泣いてたんだ
 
 男に待ちぼうけくらったって

 ・・・放っておけなかった」

ひさぎの優しさは、残酷だね。

「私が傷つくって、わかっていても?」

彼女を放って置くこと、貴方にはできな
かった。

ひさぎは、黙ったまま頷いた。

聞けば聞くほど、私の心は締め付けられ

戻せない時間をどうしたって戻したい。

そう、願わずにはいられない。

私の心は、もう駄目だって悲鳴をあげて
るのに、私はその想いに蓋をして気づか
ないふりをする。

だって、ひさぎを失いたくないから。

ひさぎに出会う前の私には戻りたくない

壊れる・・・

「ごめん・・・」

「もう、いいよ

 もう、この話は止そう

 二度と話さないから・・・」
< 249 / 409 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop