黒紅花
「いい、まだいい

 帰る時に連絡するから・・・」

「だったら今かけろよ

 ほらっ、送って行ってやる」

私は、頭を左右に大きく振る。

「チトセ?」

「まだ帰らない、ひさぎの傍にいる」

「心配すんなって、俺は大丈夫だから
 
 ほらっ、お前は帰れ」

「いやっ・・・」

「帰れよ」

重なり合う声

ひさぎの声の方が、私の声よりも

うーんと強く、この耳に響く。

「嫌だよ

 まだ、ひさぎの傍にいたいよ」
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