黒紅花
「チトセ?」

私のこと

そんなにも悲しい瞳で見ないで。

貴方の不安気な、その寂しい瞳が
ぼやけて見えなくなってゆくのは
私の視界が涙で妨げられたから。

大好きな貴方が見えない。

ヒックヒック・・・

ひさぎの瞳は、泣いてる私を映してる。

「そんなに、嫌?」

ポツリと呟いた、ひさぎの問いかけに
私はどう答えればいいか分からない。

私は両手で顔を覆い、貴方から逃げた。

何も言えない。

流れる沈黙・・・

両手で隙間なく塞いだ真っ暗な闇の中
では、貴方の表情は見えない。

ひさぎの声は言うの。

「チトセ、顔、見せて?」

私は、手を退けることなく頭を左右に
振る。
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