黒紅花
貴方は、私の手を顔から退けさせようと
掴んだその手に力を込めた。

やめて、もう、私を見ないで・・・

今の私は、貴方を傷つけるだけの存在。

「ほらっ、見せて?
 
 チトセが嫌がること、俺はしない

 約束する

 だから話そう」

話・・・?

「ほらっ、顔を・・・」

「やめて

 話すことなんて何もない」

強くなってしまった口調にハッとした私は
顔を覆う手を退けて、ひさぎを見つめる。

「ごめん・・・」

「チトセ、何があった?」

私は固く、唇を閉じる。

貴方に本当のことは話せない。

真実を、とても口にはできない。

誰かに話して、この苦しみを共有できれば
少しは私の心も静まる?
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