黒紅花
「チトセ
 俺の傷、見ただろう?
 
 だったら、今度は
 おまえの傷、見せてよ?」

返答できない私。
 
「俺ってそんなに 頼りないか?」

これ以上ないってぐらい、ひさぎは
寂しい顔をした。

「違う、そうじゃ(ない)・・・」

「もう、いい

 いいから
 
 その代わり、もう
 俺の前で無理してんなよ」

傷ついたひさぎは私の元、ベッドから
放れ、脱いだ洋服を私の体にかけた。

「着て、風邪引くといけない」

「ごめんなさい」

「謝るな
 
 チトセ、お前は悪くない」

私達は別々のベッドで、互いの温もり
を感じることなく眠る。

ううん、私達は眠ってなんていない。
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