黒紅花
「サンキュー」

私の二の腕をぎゅっと掴んだ
ひさぎの手は、スーッと私の
腕を伝い、手首へ・・・

「手首ほせぇ・・・

 折れそうだな」

「簡単には折れないよ

 ほらっ」

私がもう一方の手首を左右に
ひねると、ひさぎはニコって
笑ってくれた。

「ほんと、思ったより
 丈夫に出来てんじゃん!」

「でしょう?」

笑っていたかと思ったら、今度
はひさぎの瞳がキリっと凛々し
くなった。

その、いつもよりも大人っぽい
ひさぎの真剣な表情に私の心が
ときめく時、貴方の低い声は
囁くように語りかける。

「チトセ、今の俺は何もない
 ただの女々しい男だけど
 
 どこのどいつよりも早く一人
 前になって、いつかお前
 のこと幸せにしてやる

 だから、もし俺がこの先挫け
 そうになって、どん底で足掻
 いて見苦しい姿をお前に
 見せても
 
 俺の事見捨てずに
 俺を信じて
 俺の傍に居てよ」
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