黒紅花
泣き止まない私の頭を優しく
撫でてくれるのは、家事なんて
した事のない母の綺麗な手
だった。

「チトセ、ずっと寂しい思い
 させてごめんね
 
 ママが悪かったわ
 
 チトセ、聞いて
 ママはあなたのことを
 捨ててなんていない

 見捨てるわけないでしょう
 私の大事な娘を」

ヒックヒック・・・

捨てたのは、私だ・・・

ごめんね、ひさぎ

大切な貴方に私はまたひとつ
深い傷を負わせる。

貴方のお母さんが幼い貴方と
なぎの心に刻みつけた傷と
同じ傷を、もう一度貴方に・・

深く、深く

尖った爪で貴方の心を引っ掻き
掻き毟る。

紅い血が傷口から溢れる・・・

「チトセ
 これからは、ずっと一緒よ」

ずっと一緒に居たい人は
ごめん・・・ママじゃない。
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