黒紅花
私は、一生我慢し続けるよ。

どんなに貴方に会いたくても会いには行かない。

どんなに貴方が恋しくても……

それが、愛する人を捨てた私の報い。

自分の傷口を見せる事もせず、一人消えた罪。

「じゃあ、そろそろ切るわ

 タクさんの奥さんが歓迎会
 してくれるってさ」

「そうなんだぁ

 ひさぎ、よかったね」

「ああ

 じゃあ、チトセ

 また連絡(する)……」

「ひさぎ、元気でね
 お仕事がんばってね
 あっでも無理し過ぎちゃダメだよ
 ほらっ体調崩すといけないから
 そうだ、風邪にも気をつけて
 それから後は……」

「チトセ、もう黙って
 
 俺なら大丈夫だ、なっ?」

「うん、そうだね……」

流れる沈黙。

もうこれで最後、もう二度と貴方の声を聞くことはない。

最後に聞きたいこと……

「チトセ?」

「うん?」

「聞いて

 俺はお前を愛してる」
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