黒紅花
「チトセ、私これでも傷ついてさ
 恋なんてもう二度としないって
 思ってたんだよね

 でもさ、恋したら幸せだよ」
 
「うん」

私も、幸せだった!

ひさぎに恋したことは間違いじゃなかったとはっきり言える。


ある日のバス停、退屈な時間----

ひとりきりの私の手に、触れる人がいた。

温かくて優しい手。

『ちょっと来て』

ひさぎと出会って、ひさぎの存在を知り、ひさぎの声を聞いて

ひさぎを愛して、ひさぎに愛されたこと

私は一生、忘れないよ。

例え貴方が忘れてしまっても、私は忘れない!


支払いを終えて、カフェから出て来る二人----

「おばあちゃんと買物だったんだね
 
 急いで帰らなきゃだね
 
 引き留めてごめんね」

祖母からの電話で、なぎとの時間は終わり。

「ううん
 ナギと会えて話せてよかったよ」

カフェの前にドカッと停められた大きなバイクに、私は目がいく。
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