黒紅花
ひさぎが昔乗ってたバイクより、大きい。
「チトセ、じゃあね
気をつけて」
なぎと別れた後----
私の背を見送ってくれていたなぎが、もう一度店内に入って行ったことを私は知らない。
店内、深く腰掛けた男性は、テーブルの上、帽子をギュッと握りしめる自分の手をただ見つめている。
端正な横顔、声をかける女の子達。
「あのぅ、お一人ですか?
私達と一緒に……」
「ごめん、そこ退いてくれる」
女子の間に割り込み、テーブルにドカッと鞄を置くのは、なぎ。
テーブルを挟んで、男性の前の椅子に腰かけた。
「ヒサ兄、お久しぶり
それでだけど
聞いてたんでしょ、どうするの?」
「……」
「元カノなんかに手出してほんと
バカな奴だと思ったけど
ヒサ兄、アンタってば
もっと大バカだったんだね
何か言い返せば?」
「ああ、……だな
マジ、言葉も出ねえわ」
「チトセ、じゃあね
気をつけて」
なぎと別れた後----
私の背を見送ってくれていたなぎが、もう一度店内に入って行ったことを私は知らない。
店内、深く腰掛けた男性は、テーブルの上、帽子をギュッと握りしめる自分の手をただ見つめている。
端正な横顔、声をかける女の子達。
「あのぅ、お一人ですか?
私達と一緒に……」
「ごめん、そこ退いてくれる」
女子の間に割り込み、テーブルにドカッと鞄を置くのは、なぎ。
テーブルを挟んで、男性の前の椅子に腰かけた。
「ヒサ兄、お久しぶり
それでだけど
聞いてたんでしょ、どうするの?」
「……」
「元カノなんかに手出してほんと
バカな奴だと思ったけど
ヒサ兄、アンタってば
もっと大バカだったんだね
何か言い返せば?」
「ああ、……だな
マジ、言葉も出ねえわ」