黒紅花
「ひさぎ?」

「昔の女に手出してお前のこと傷つけた

 赦せない行為、ほんと汚い奴

 幾つになっても自分のことしか見てなくて
 中身はガキの頃のまんま、全く情けねえ
 ったらねえな

 親に捨てられた、たったそれっぽっちの
 傷を大層に大事に抱えて、いつまでも
 被害者ぶって

 分かるよ、こんな俺から逃げたくなる
 お前の気持ちが、煩わしくなる気持ち
 ……」

振り返り、私は言う。

「そんな!

 私はひさぎ、貴方のことを煩わしいだ
 なんて思ったこと一度もない

 ……

 正直、元彼女との関係を知った時
 私の胸はざわついた
 
 苦しくてたまらなくて胸がこわれそうで
 貴方のこと、本当にひどい男だと思ったよ」

「チトセ」
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