黒紅花
私の前にそっと立つ貴方は、私を優しく抱き寄せて囁いた。

「お前は俺が守る」

「……いいの?」

こんな私で……

「ああ」

「本当に?」

「ああ、お前がいい

 もう、何も考えるな

 ただ俺の傍に居て

 ……二人きりで居よう」


抱き合えなくても

こうして、抱きしめ合うことはできる。


ひさぎの首に抱きつくと、貴方はホッと息をつく。

そんな貴方に私は告げる。


二度と言えないはずだった、溢れる想いを。


「あなただけを愛してる」


繋がり合えなくても

こうして、繋ぐことができる。


指と指を絡ませ繋ぐ手。


「愛してる」


二人きりになれる場所

そう、二人にしか分からない愛の形があってもいいだろう。
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