黒紅花
祖母の家から一旦自宅に戻った私は、お出掛けの準備を済ませてゆく。

鏡の前、長い髪を解いた後、私は最後に赤色のリップを唇にひく。

そして壁時計を見たちょうどその時、家の鍵が開く音がした。


「ただいま」

「ひさぎ、おかえりなさい
 
 どうしたの、いつもより早くない?」

「ああ、タクさんが気を利かせてくれて
 出掛けるなら今日は早く帰れって」

「本当、よかった
 じゃあ、集合時間にも間に合いそうだね」

「ああ」

「着替えるでしょう、今用意するね」

「ああ、サンキュー
 
 ところでチトセ
 おばあちゃん家には行って来たのか?」

「うん」


上着のポケットから携帯電話に鍵、ズボンの後ろポケットからは財布を取り出して順番にテーブルに置いて行くひさぎ。


「どうだ、元気にしてたか?
 
 一人で大変そうじゃなかったか?」
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