堕天使の銃声
序章
(パァン!!)
もう聞きなれてしまった音が、遠くまで響き渡ると、私の頬に、数滴の血がついた。
「………」
汚いものを取り去るように、それを服の袖で拭い去ると、持っていたリボルバーを懐にしまい込み、代わりに携帯電話を取り出し、どこかへ電話をかけた。
「…こちら、高崎。
現時刻を持って、任務終了。
目標、及び関係者の完全抹殺に成功。
これより、周辺クリーニングに入る。」
冷たい声。
よくそう言われるこの声で、任務が完了したことを、本部へと連絡する。
するとしばらくの間をおいてから、返答が返ってきた。
「任務終了、了解。
周辺クリーニングは本部で行う。
現場の指揮権を放棄し、直ちに本部に帰還せよ。」
「………了解。」
どうせ、また新しい任務だ。
そう考えながら、目の前に横たわる、血塗れの男の死体を見下しながら、呟いた。
「どうせ、私は道具よ…」
その言葉は、誰の耳に入るわけでもなく、少し遠くまで響いて、消えた。