堕天使の銃声
第二章
保健室に入る前に、両目にはめられたカラーコンタクトを取り、黄と赤という、普通ならあり得ない瞳の色を露わにしながら、保健室の扉をたたく。
(コンコンッ)
「………」
返事がなく、人がいる気配さえない。
だが、坂本は確実にこの中にいるだろうと踏んで、私は保健室の扉を開いた。
(ガラッ)
「やっと来たか、転校生ちゃんよォ…」
そこには、教師用に備え付けられた机に座り、鋭い眼光を放つ右目で、こちらを見据えている、白衣と眼帯が印象的な男。
まさしく、坂本 晋之助。
「これ、何?」
たいした話をするわけでもなく、私はすぐに本題に入る。
麻衣から渡された紙切れを、坂本の机の上に出し、そう問いかけた。
「いや、たまたま屋上で煙草を吸ってたら、お前が現れてな?
何を思ったのか、自分の手をナイフで刺すわ、独り言をしゃべりだすわ、見ていたら面白くてなァ……
聞こえちまったのさ、要するに。」
(こいつ………)
私はあの時、屋上に人の気配がないことを確認して、あれをやった。
でも、こいつはその屋上にいたと言っているということは、こいつは気配を消すことができるということ。
故意にやっているのか、無意識のうちにやっているのかはまだわからないが、少なくともそれが、組織に関わっていたということは、間違いなさそうだ。