DEAREST...
「この間はありがとうございました!あの時ちゃんとお礼出来なくてごめんなさい」


あたしの言葉に彼は

「君を見つけて直接渡してあげることが出来て良かったよ」と言った。


その言葉にあたしは生まれて初めてキュンとした。


彼が勤務カードを渡してくれたあの日。
そう…初めて会ったあの日から
あたしは恋をしていたのかな…………


「また買いに来るね」

彼はそう言って去って行った。


偶然この店に?

それとも勤務カードを見て買いに来てくれたの?


あたしは今まで経験したことのないドキドキ感に
襲われ続けた…。


理由がどっちであれ、
あたしに会うために来てくれたんじゃないかって
あたしの考えはだんだん膨らんでいく。


あたしの初恋……。


午後9時にバイトが終わり
不思議な気持ちと不思議な感覚のまま、
あたしは着替えてデパートの裏口から外へ出た。


裏口を出てデパートの正面玄関の前を通り過ぎようとした時、
大きなツリーの下で彼がニッコリ笑って立っていた。


あたしは何のためらいもなく彼のもとへ走った。

「どうしてここに…?」

「どうしても君と話がしたかったんだ。
ここにいれば君に会えるんじゃないかな、と思ってさ。」

そう答えた彼はあたしの顔を見て
続けてこう言った。


「会えて良かった」
< 14 / 32 >

この作品をシェア

pagetop