魅惑★ladyの作り方



「チッ…」


朝、翔は制服でバイクに跨り、煙草を吸っていた。

頭の中はもう先程の女の事などなく、華楠の言葉と風間兄弟の悲しげな顔だけ。



「くそ…!」


煙草を落とし、くしゃっと踏むとブゥンッとバイクを飛ばした。



気に食わない。
妹のような未来と、いつも自分に気をかけてくれる唯一の友人の事を一番に考えていた筈なのに…
あんな、どこから出てきたかもわからないような女に二人が理解できて、俺は二人を傷つけた。



「カナン…」


もう行き付けとなった海で、唯一、自分が夢中になれた女の事を考えてそのハンカチを握り締めた。

塩の香りと花の香り。


いつも何かあったり悩んだらここに来てしまう。

翔は辺りを見渡し、似合わぬ不良の格好をした自分を自嘲するかのように笑った。



「もう一度、会いてぇ…」


花のように可憐で美しいあの時の女、カナンに…。


 
 
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