魅惑★ladyの作り方
『…大丈夫です、遠慮します。
すぐそこなので』
「いやいや、あなたはご自分が思っている以上に重傷ですからね。
私は医院長から貴方を頼まれていますし…
他に担当もないので、遠慮する必要ないんですよ?」
研修医は優しく笑い掛け、後ろに回って車椅子のハンドルをゆっくりと握る。
『一人になりたい気分なんです』
「おや、孤独をお好みで?
なら良い場所が」
『きゃっ…!』
クルッと方向転換し、色んな人と挨拶を交わしながら笑顔で車椅子を押す研修医。
華楠は暴れたくても暴れられずただ眼鏡の奥で不安げに瞳を揺らした。
暫らくして着いたのは、普段使われる事のない病院最上階の階段だった。
「屋上に行くには階段しかないんです…
では、失礼しますね」
『いやっ…!』
華楠を抱えようと手を伸ばした研修医だったが、華楠にその手を払われてしまった。