魅惑★ladyの作り方
「…ゴメンね、父さんが。」
『あ、いえこちらこそ。
わざわざ申し訳ありません。』
大きな運転手付きの車に乗り、華楠の自宅まで送られる。
が、実際に送るのは華楠の家の近くの錆びれた公園だ。
華楠が金持ちだと知られないために。
しばしの沈黙。
華楠は密かに汗をダラダラと流すが帝は余裕綽々。
帝はそんな華楠をちらりと見て、溜め息を吐いた。
「えっと、結城さん?
お洒落には興味ないのかな。」
『お洒落…ですか。
今はあまり。
勉学に集中したいので。』
厚い眼鏡の奥で、華楠の長い睫毛が揺れる。
帝は勿論それには気付かず、そうなんだ、と呟いた。
また沈黙が続き、華楠が口を開いた。
『…苛々なさってますね。
スミマセン、こんなで。』
無表情で淡々と述べた華楠。
帝は苛々している素振りなど見せたつもりはなかったので、驚いた。