魅惑★ladyの作り方
華楠がゆっくり近づくと、男は椅子に座り、その隣にもう一つ椅子を出して指差した。
座れ、という事だろう。
華楠もそれを察し、大人しく座った。
男は机の上にあった鞄に手を伸ばし、中から紙とペンを取り出した。
そしてスラスラとペンを滑らせるとそれを華楠に突き出した。
[理事長室に来た、結城かなんだよな?]
『あ、はい。
華族の華に、木に南で華楠って書きます。』
華楠は理事長室にいた人か、と思い、説明しながら紙の端に[華楠]と書いた。
男はそれを見て頷き、[北川 慧]と書いた。
『北川…先輩ですよね?
失礼かも知れないんですけど、話せ…ないんですか?』
華楠がおずおずと聞くと、男…慧は[訳ありだ。]と書いた。
華楠は深く聞くものじゃないか、と頷いた。