魅惑★ladyの作り方



[いつも、馨と昼飯を食ってるのか?]

『あ、はい。
少し前から。』


慧はその答えに興味深そうにへぇ、と頷いた。

馨が女と関わりを持つなんて珍しい。
しかも、そいつ用に試作品デザートを一つ多く用意しろと頼んできたのだから。
しかも、この女は少し興味のある声だ。
…駅で聞いたあの声と、似たものがある。



[甘いものが好きなのか?]

『はい、凄く。
でも昔失敗してから作った事なくて、憧れます。』

[そうか。
なら、また作る時にでも呼ぶ。]

『わっ、本当ですか!?
待ってます。』


紙と言葉で上手く会話をする二人。
とんとん拍子に話は進み、二人はメールアドレスも交換した。



『あ、瓶洗いますね。
何もお礼が出来ないので。』

[助かる。]


華楠は立ち上がり、瓶を洗い出す。
慧はその様子を隣でじっと見ていた。
心地よい沈黙が二人を包む。

慧は水の音を聞きながら、浅い眠りに着いてしまった…。


 
 
< 56 / 212 >

この作品をシェア

pagetop