魅惑★ladyの作り方
『…北川先輩、こんにちは。』
「…」
放課後。
華楠は言った通り家庭科室にいる慧の元を訪れた。
昨日の夜、慧からドーナツを揚げるのを手伝ってほしいとメールがきていて前から約束していたのだ。
[いきなり呼び出してすまない。]
『いえ、全然。
ドーナツなんて作る工程も知らないので、揚げるだけでも手伝えるなんて楽しみです。』
[それなら良かった。
今日の昼のはどうだった?]
『おいしかったですよ。
ただ、少し中がしつこい感じだったのでもう少しサックリさせた方が良いか、と…。』
[切った感じでそんな気がしてた。
これで決意できたから助かる。]
『そんなそんな。』
紙と声でリズム良く会話する二人。
華楠は話しながらも手は料理道具を洗うために動いていた。
最初は慧がしていたのだが、華楠の少しでも話が聞きたいという希望である時は華楠がする事になったのだ。
[そろそろ揚げるか?]
『はい、そうですね。
準備はできてますよ。』
[結城は気が利くから助かる。]
『お役に立ててるなら光栄です。』
二人は軽く笑い合いながらサックリとドーナツを揚げた。