神様は不公平
高校1年生 夏
「絢子、まってぇぇぇぇ」
ぺたぺた走りながら明花が叫んでいる。追いつくとぜいぜい言いながら頭のお団子に手をやった。崩れていないか気になっているのだろう。
「羽須美に英語教えてもらってたの。昼休みって短いよね。」
羽須美というのは明花の中学からの友達。正確には『角倉 羽須美』という。トップクラスの成績を誇っている秀才だ。
「英語?英語なら私も教えてあげたのに。」
私がそう言うと、明花はやだなあ、と私の肩を叩いた。
「絢子は、昼休み社会人の彼とメールで愛を育むのかなぁ、って思って。邪魔しちゃいけないでしょ。」
いいなあ、と明花は遠い目をした。
「ね、どうやって出会ったの?社会人の彼。」
「どうって、中学のときに家庭教師をしてくれていたの。」
「家庭教師?うわーい、ロマンスだあ。ね、今度会わせて。」
「だめ。」
「どうして?」
「修はロリコンだから。」
あはは、と明花は大きな口を開けて笑う。


「女がそんなでかい口開けて笑うのはどうかと思うけど。」


「あ、アマ。」
振り向くとクラスメイトの『甘木 悠平』がいた。
「前島、お前黒坂と一緒にいるとちんちくりんが目立つぞ。」
「失礼な、あんたこの前羽須美と一緒にいたときも同じようなこと言ったでしょ。」
「角倉も黒坂もスタイル良いからな、せいぜい頑張れよ、発展途上。」
「発展途上って事は、可能性があるってことよね。」
「絢子ってば、やっさし~~。」
そう言うと明花は私に抱きついた。

「あ、黒坂、後で英語のノート見せてくれる?俺、この前休んでてさ。」
「いいよ、私のでよければ。」
「助かる、ありがとう。ついでに古典もいいかな?」
「古典は明花の方が得意だけど。」
「アマになんか見せてあげないよ。だってちんちくりんって言ったもん。」
そんな事を話しているとチャイムが鳴った。
「あ、化学が始まる。」
慌てて私達は教室に帰った。

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