神様は不公平
ちょっとうつむきながら教壇にたった。
教壇に立っても明花の背は小さい。

深呼吸をすると明花は話し出した。

「前島明花です。私の高校生活はとても充実していました。大好きな友人もできたし、勉強も私なりにがんばってきました。自分の将来についても真剣に考えました。


一つだけ心残りは高校三年間、彼氏が出来なかったことです。」


そこの部分でみんな笑った。いつも明花の口癖だったからだ。


「と言いたいところですが、実は別にそこまで心残りではありません。」

急に教室が静かになった。


「私は高校三年間、ずっと同じ人が好きでした。彼氏が欲しい、と口癖のように言っていたけれど、その人以外は嫌でした。私はずっとその人に私のことを好きになってもらいたかった。でも結局私は今でもその人に釣り合う人間である、という自信がありません。」


教室は物音一つしなかった。


明花は私が考えていたよりもずっと大人でもっと子供だった。

意味わからない言い方だけどこれが一番しっくりくる。



「将来、私は国語や文章に関わる仕事に就こうと思っています。そして、世界に胸をはれる人間になることが目標です。」

明花への拍手はとても大きかった。普段ぼんやりしている明花だけにしっかりしたことを言ったことが意外だったのだろう。
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