ACcess -操-
席を立って扉へ向かう。
「今日のことは忘れて。」
後ろからアリスが話しかけてきた。
「…どうして?」

振り返ると、アリスはお馴染みのポーズのまま微笑んでいた。
「今日ここであった事は、私達しか知らない。
 だから、忘れた方がいいかなって。」
足を組んで、こちらに体を向けながら、頬杖をついていた。

でもそれが一瞬、違うものに見えた。

茶髪を髪止めで一つにまとめて、アリスに似た女の人が座っていた。

しかし、あまりにもびっくりして言葉を繋げるのに懸命になった。
「…あ…え?
 あの…わ、忘れる?せっかく話せたのに勿体ないよ。」
「いいの。」

目を凝らして見れば、いつものアリスだった。
「アリスとスカイ…じゃなくて、現実の私と貴方との会話って事にして欲しいの。」
「…何故?」
「これからも、スカイはスカイのままでいいって事。」

首を傾げると、短く笑った。
「フフっ。そのままの意味よ。
 この事があるまま、私に接しなくていい。
 フライとペッパーにだけ懐いているスカイのままでいて。そのままのスカイを演じて(ロールして)いればいいわ。」
「なんか…すごく、自己中心的だな。理由になってない。」
「貴方の為よ。
 きっと、貴方はみんなと仲良くしようと一生懸命になるわ。 でも、貴方は特別なの。だから簡単に、心を開けないかもしれない。
 もしかしたら、それが原因でまた心に傷が増えるかもしれない。
 なら、今日の事は忘れてしまえばいい。ゆっくりみんなに心を開けばいい。そう、思わない?」
笑った顔は少し照れている表情だった。
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