アルコールと彼の指輪
◆二十歳のあたし
大学二年の春、あたしは二十歳の誕生日を迎えた。
と言っても、ほんの数分前より背が高くなったとか、胸が大きくなったとか、そんな目に見える変化は一つも無かった。
大学に誕生日を祝ってくれる友達なんていないし、まして彼氏なんて高二以来ずっといない。そんなあたしにとって、東京で一人過ごすだけの時間はあまりに長過ぎた。
「おじさん、」
「くまちゃん、俺は君と三つしか変わらないよ。おじさんはちょっと言い過ぎなんじゃないかな」
「嘘、三十くらいだと思った」
男は困ったように眉を垂らして笑った。アーモンドの柔らかな瞳が細められ、目尻には優しげな皺を刻む。老けている訳じゃなく、それが彼の笑い方なのだ。
見た目は若い。二十三歳と言われればそう見えるし、まだ高校生だと言われれば随分と大人っぽいなとは思うものの、あっさりと信じてしまうと思う。
そんな胡散臭さに惹き付けられたのか、いや結局は人間なら誰でも良かったのか。
『お酒、一緒に飲みませんか』
そうやって彼を誘ったのは、かれこれ三十分も前のことだ。
真夜中の十二時過ぎにいきなりよく知らない男の部屋に缶ビールを二本だけ持って上がり込む女なんて、あたし以外にいるだろうか。
『いいですよ』
二つ返事でよく知らない女を部屋に上げるこの男もこの男で、相当な変人だとは思うけど。
と言っても、ほんの数分前より背が高くなったとか、胸が大きくなったとか、そんな目に見える変化は一つも無かった。
大学に誕生日を祝ってくれる友達なんていないし、まして彼氏なんて高二以来ずっといない。そんなあたしにとって、東京で一人過ごすだけの時間はあまりに長過ぎた。
「おじさん、」
「くまちゃん、俺は君と三つしか変わらないよ。おじさんはちょっと言い過ぎなんじゃないかな」
「嘘、三十くらいだと思った」
男は困ったように眉を垂らして笑った。アーモンドの柔らかな瞳が細められ、目尻には優しげな皺を刻む。老けている訳じゃなく、それが彼の笑い方なのだ。
見た目は若い。二十三歳と言われればそう見えるし、まだ高校生だと言われれば随分と大人っぽいなとは思うものの、あっさりと信じてしまうと思う。
そんな胡散臭さに惹き付けられたのか、いや結局は人間なら誰でも良かったのか。
『お酒、一緒に飲みませんか』
そうやって彼を誘ったのは、かれこれ三十分も前のことだ。
真夜中の十二時過ぎにいきなりよく知らない男の部屋に缶ビールを二本だけ持って上がり込む女なんて、あたし以外にいるだろうか。
『いいですよ』
二つ返事でよく知らない女を部屋に上げるこの男もこの男で、相当な変人だとは思うけど。