紅龍 ―1―
「―――………。」
目が覚めるとまだ起きていないシュウマと私達以外、誰も居ない部屋が目に入った。
「シュウマ―…。」
寝ていた私の目からは一滴の涙が落ちて、シュウマの頬を濡らした。
私はシュウマの頭を撫でながら声を殺して泣いた。
何で泣いたのかなんて分からない。
ただ無性に泣きたかっただけかも知れない。
感情のない涙がどんどんあふれ出る。
その度にシュウマの頬を濡らした。
私は思い出したのかも知れない。
蔵御堂 柚(クラミドウ ユズキ)さんの事を―…。
そうだ―…蔵御堂。
その名を私が知らないはずがない。
柚さん―…
救えなくてごめんなさい。
「ごめんなさい―…。」
私はあなたを救えなかった…。
苦しんでいたあなたを救えず、シュウマからあなたを奪ってしまったとしたら…
私は―…。
「柚さん―…」
あふれ出る涙は私を責めるだけ…