紅龍 ―1―
「ここなら誰もこない。」
俺たちが着いたのは中庭。
ここは人が全くこない人気のない場所で、俺たちにはピッタリの場所だった。
「結真?」
私は何かを聞こうとはせず、結真を下から覗いた。
静かな中庭で俺の声だけが響いている。
さっきから俯いたままの結真。
ごめんな―…結真。
そんな思いを込めて俺は
「結真―…。」
もう一度名前を呼んだ。
「蘭――…。」
それに答えるように結真はゆっくりと顔をあげ俺の名前を呼んだ。
その顔はとても悲しげで、俺は次の言葉を失った。
「そんな顔すんなよ。蘭を困らせんな。」
そんな気持ちが伝わったらしい。隼人が結真の頭をこついた。
どうやら隼人はやっぱりエスパーらしい。
俺は隼人をじっと見つめながら
「結真。隼人には気を付けておけ。」
真面目な顔して言った。