紅龍 ―1―
「いや………親父がな…『涼ちゃん!!学校開かない?パパが作ってあげるー☆』とか言ってな。いやぁ、あん時は気持ち悪かったなぁ…」
息継ぎなしにペラペラと話しだした兄貴。
てか、親父―…語尾に☆なんかつけて
何してんねん!!
本当にあの親父どんだけだよ。
まぁあの親父が簡単に私を男子校になんか行かせないよね…。
兄ちゃんが理事長だからか…今さらきずくとは
不覚だよ!!
「―…蘭?それより……」
またしても馬鹿な思考をしている私に優しい声が届く。
………兄貴が真剣な顔をしていた。
急に空気が変わった理事長室。
兄貴の綺麗な黒い瞳が映る。
さらさらな髪。
小さい頃から母親似の兄貴が羨ましかった。
人の心が分かる優しい私の母親似の兄貴が。
「んっ?何?」
「……今まで何してたんだ?」
でも、できるなら聞かないでほしかったよ…
「―…。」
"今まで何してた?"
兄貴が聞くのはしょうがない。
私は"紅龍"を抜けてから姿を消していたのだから。
中には死んだなんて噂もあったし。
ほんとに色々あったな―…。
いや、色々ありすぎた。