紅龍 ―1―


「―…。」


思い出すのがやっとの過去。


目の前の光景は現実とはほどかけ離れていた。



血、涙、叫び声。




私のせい―…?



そんな考えが頭をよぎる。


つらい過去。


「―…っ」


気ずけば私の頬を大粒の涙が流れていた。


「蘭!!?!あっ、えーと、ごめんな?つらいよな…今は話さなくていいよ。だから泣くなよ…話はお前が話せるようになった時でいいから聞かせて?」


そう言って私の頭を撫でる兄貴の手。



暖かい。



ずっと人の暖かさが恋しかった。


でも、今の私には暖かすぎるよ―…。








誰か―…







この闇から私を引っ張り出して………









暗闇は怖いんだ。







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