仮面舞踏会【短編二編】
しばらく沈黙が続いた。

その気まずい沈黙の中、

突然!絵梨香の携帯メールの着信音が鳴り響いた。

絵梨香はポケットから携帯電話を取り出した。

(駿からだ!)

『もう・・・帰る』

絵梨香はさっさと出ていってしまった。

ふと玄関を見ると、白い紙が落ちている。

『何かしら?』

小さなメモだった。

『みどりのやかた?』







絵梨香は、外へ出ると さっそくメールを開いてみた。

【僕の車の中に君のイヤリングがあったから、ポストへ入れておきました】

急いで帰宅した絵梨香は、ポストを開けてみた。

そこには小さな白い箱があった。

開けてみると、

プラチナ製のイエローダイヤのイヤリングが入っている。

失くしたと思っていた片方のイヤリング。

それは駿と付き合って間もない頃に、

彼からプレゼントされた物だ。

こんなかたちで返されるのなら、

いっそ失くしたままのほうがよかった。






【世の中には もっと絵梨香のこと・・・・

大切にしてくれる人がいるかもしれないよ】

京香の言葉が頭から離れなかった。

(私の思ったとおりだわ。

駿とうまくいきそうになってきたから 

私に彼を諦めたほうがいいとばかりに偉そうなことを言って!

そうか・・・私たちが付き合っていると知ったから、

きっと見ているだけでは満足出来なくなったのね。

それなら、過去に戻って絶対に京香にばれないように慎重に行動するしかないわ)

絵梨香は部屋へ戻るとカレンダーを広げて、

ちょうど由佳と偶然ばったり会った日を指で追った。

(ここだわ!)

その日に指を当てると、絵梨香の意識はなくなっていった・・・・・。



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