仮面舞踏会【短編二編】
しかし まだ彼に別れを告げられた理由がわからないうちは、

一時も安心することが出来ない。

絵梨香の駿への気持ちは、あきらかに以前とは違う。

今では、駿をもっと大切に想うようになっていた。

そして絵梨香の駿への気持ちが大きくなればなるほど、

彼を失いたくないと強く願うようになった。

初めて彼からもらったプレゼント・・・・・

開けなくても中にはイエローダイヤのイヤリングが入っていると分かっている。

それでも二度目のほうが感動している自分に驚いて、

二度と失くすまいと宝物のように大切にした。

何もかもが二度目の出来事なのに、駿との時間の全てが充実していた。

由佳にも、京香にも知られることなく毎日が過ぎてゆく・・・・

そして忘れもしないあの日がやってきた。

曇り空の遊園地・・・・・

まるで審判が下される法廷のようだ。

間もなく駿が表れた。少し様子がおかしい。

あの時は気付かなかったが、確か こんな態度だったように思える。

(なぜ気付かなかったのだろう?あの時の私・・・・一人ではしゃいでた)

絵梨香は耐えられなくなり自分から訊いてみた。

『あの・・・もしかして何か話しがあるんじゃないの?』

駿は驚いた表情で じっと絵梨香を見ていたが、深く頷いた。

『別れよう・・・・もう君とは付き合えない』

その瞬間、絵梨香は全ての雑音が聞こえなくなったような気がした。
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