仮面舞踏会【短編二編】
道化師が近づいてきて絵梨香に一礼する。

赤い風船を受け取ると、

あの時と同じように風船の糸にメモが巻きついている。

絵梨香はそのメモを開いて確認するとコートのポケットに入れた。

突然、携帯電話の呼び出し音が鳴ったので電話に出ると京香だった。

『もしもし 絵梨香?私ね、結城さんに食事に誘われたのよ。

あまりに嬉しくて絵梨香に報告したかったの』

『そう・・・・よかったじゃないの』

『どうしたの?声が沈んでいるけれど・・・・何かあったの?』

『いいえ何もないわよ・・・・じゃぁまた今度』

(でも 何で駿に嘘が ばれたのかしら・・・・・)

絵梨香は深く後悔した。

駿と出合った時に戻って、堂々と嘘などつかずに彼を振り向かせれば

彼を失うことなどなかったのかもしれない・・・・・

ひとり・・・・

遊園地に とり残された絵梨香は、

京香の電話を切ると、再び碧の占い館へ向かった。

あの日と同じ

どんよりと曇った空は 今にも雪が降りそうで寒々としていた。

海が見える高台の古い洋館・・・・

壊れそうなドアを開けて中へ入っていく。

二階への案内板は、なくなっている。

階段より左側の奥にドアが見える。

以前にも、それがあったのか なかったのか思い出せない。

もしかしたら気がつかなかったのかもしれない。

あの部屋は何かしら?

階段を通り過ぎて、そのドアの真鍮のノブに手をかけると

そっと廻して押してみた。

軋む音が屋敷中に大きく響いた・・・・

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