仮面舞踏会【短編二編】
『いらっしゃいませ』

絵梨香は一瞬驚いた。

『あの・・・ごめんなさい。勝手に覗いてしまって』

『ここを選んで入られたのなら、どうぞお掛けください』

その占い師の女性は人形のように美しい顔立ちをしていた。

長い髪は波打ち まるでアンティークドールのようにも見える。

『私・・・以前も ここへ来たのですが』

『二階にですね・・・・それで あなたの望みは叶いましたか?』

『いいえ・・・・お願いです。

どうしたら彼の心を取り戻せるのか占ってください』

占い師は 両手で水晶玉を温めるような仕草をして、

じっと見つめた。

『彼は、あなたではなくて別の女性を選んだようです。

理由は、あなたにあるようですね』

絵梨香は深く考えてみたが、皆目見当がつかなかった。

『あの・・・・もう少し詳しくわかりませんか・・・・』

見た目が全てだと思っている絵梨香にとって

駿が京香を選んだことが信じられなかった。

『もっと自分を磨くことです』

『私・・・充分努力しています。』

『内面のことを言っているのですよ。

人を外見でしか評価出来ない人ほど 自分のことが見えていない』

占い師は、そう言うと金と銀の縁の手鏡を差し出した。

『これは、あなたの心を映す鏡です。』

絵梨香は、その鏡を受け取って覗いてみた。

鏡は、いつも絵梨香の味方だった。

髪の毛の一本一本、きめ細かい肌、大きな瞳と長い睫毛・・・・

すべて美しく映してくれた。

しかし、その鏡に映る自分は、まるで別人だった。

それも、人間の顔というよりもグロテスクな動物のようでもある。

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