仮面舞踏会【短編二編】
『どうしてもと言うのなら?』

『これが最後ですよ』

絵梨香は、希望に満ちた表情で頷いた。

『それから・・・・』

絵梨香は瞬きもせずに、老婆の次の言葉をじっと待っていた。

『前にも忠告しましたが、絶対に他言してはいけません。

もしも約束を破ったら・・・・』

『はいはい。消滅するんでしょ?』

『わかっていれば結構・・・・』

老婆はそう言うと、カレンダーを絵梨香に渡した。

以前と同じシンプルなカレンダーだ。

絵梨香は、それを受けとると大事そうに抱えた。

『あの・・・今日はいくらお支払したらいいですか?』

『いくらでも。あなたが支払いたい金額で結構です』

絵梨香は少し考えていたが、

財布を取り出すと、千円札を一枚だけ老婆に渡して部屋を出て行った。

『これが、今のお前の価値なのだよ・・・』

誰もいない部屋で、そっと呟く老婆の声・・・・・。

絵梨香が階段を降りていくと、

さっきの一階の部屋の前に、何か落ちている。

拾って まじまじと見た。

金にダイヤのブレスレットだ。見覚えがある。

(間違いない・・・・・

あのディナークルーズの時に京香の手首で輝いていたブレスだ!

でもなぜ?まさか京香がここへ・・・・

そうか!もしかしたら京香も過去へ戻ったのかもしれない。

そして、私の妨害をしたのかも)

絵梨香の心は猜疑心でいっぱいだった。

ブレスレットをポケットに入れると、碧の館の扉を開けて外へ出た。
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