仮面舞踏会【短編二編】
絵梨香の頭の中では、

迷わず京香とディナークルーズへ行った当日へ戻ると決めていた。

京香との約束を当日キャンセルして、

ひとりでクルーズへ出かけて結城 駿と出会うという作戦だ。

船上で、駿に故意にぶつかって印象付ける。

そして あのスポーツセンターで偶然を装い話しかける。

これなら駿に、京香と友人だということも知られないですむ。

嘘をつくこともない。

自宅へ戻った絵梨香は、さっそくカレンダーを広げて

京香とディナークルーズへ行く当日の日付に指を当てた。

( 再び過去へ・・・・・これで全てが、うまくいく・・・・・・)




絵梨香は、碧の占い館の前に立っていた。

暗く静まり返った住宅街は、

碧の館の薄暗い照明しか灯されていなかったせいか 

とても不気味に感じた。

(どういうこと?何でこんな場所にいるのかしら?たしか・・・

ディナークルーズの日に戻ったはずなのに・・・・)

絵梨香は朽ちかけたドアを開けて館の中へ入ると

何故か無意識に 二階へ向かった。

ふと踊り場の左側の階段を目で追っていくと、そこにはドアがあった。

(確か以前は なかったような気がする・・・・・)

もしかして、占い師が言っていた未来の部屋とか?

絵梨香は好奇心から 

少しだけ覗いてみようと恐る恐る真鍮のノブに手をかけた。

軋むドアの音が館中に響く・・・・

一歩 一歩 薄暗い部屋へと進んでみた。正面に誰かいる!

化け物のようなグロテスクな顔の人間だ!
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