仮面舞踏会【短編二編】
絵梨香は声も出なかった。

しかし、なぜか彼女と同じ動きをする。

『心を映す鏡は気に入ったかい?それが真のお前の姿なのだよ』

驚いた絵梨香が振り向くと、老婆の占い師が立っていた。

『嘘よ!こんな姿・・・私じゃない』

『間違いなくお前自身なのだよ・・・・・ここは醜い心の集う部屋』

『醜い心?私が?』

『そう・・・自己中心的で 

言葉や行動で他人の心を踏み潰し、

自分を認めない人が現れると強引にでも方向を変えようとする。

表面でしか人の価値を決められない人間ほど

自分が一番醜いことに気付いていない・・・

お前もその一人。

まだ気付かないのなら、それを見なさい』

醜い絵梨香の姿を映している大きな鏡は、見覚えのある映像に入れ替わった。

それは絵梨香が過去へ戻る前のことで、

由佳との電話を切ったあとに

京香のマンションへ事実を確かめに行ったときのことだ。


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