仮面舞踏会【短編二編】
『実は以前から京香さんのことを好きでした』

『何を言うんですか?結城さんは絵梨香の恋人じゃないですか!』

『彼女とは今日別れました。僕は彼女に失望したのです』

『やめてください!絵梨香は私の友人なんですよ。

なぜ今 そんなことを言うのか理解出来ません。

結城さんのことを尊敬していたのにがっかりしました。

失望したのは私のほうです』

以前の京香ならこの上ない幸せな気分になったであろう。

しかし今は違う。

確かに、絵梨香と結城駿が付き合っていると聞いたときは、

何日も泣いて過ごした。

でも、絵梨香は大切な友達なのだからと

自分に言い聞かせて祝福するように努めた。

今夜はその時以上にショックだった。

彼は理想と大きくかけ離れていたのだから・・・・。

まるで友達と好きな人を同時に失ったような気持ちで、

何もかもが嫌になってしまった。

『ここへ行っても、悩みが解決するわけではないけれど

何もしないよりは、ましかも』

京香は、コートを羽織り外へ出ると急ぎ足で街はずれ4丁目へ向かった。

高台からの夜景に見とれることもなく碧の館を探し続けていると、

どこからともなく聴こえてくる不思議なワルツのメロディー

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