仮面舞踏会【短編二編】
『彼は、お前が計画的に近づいてきたことを、こうして知ったのだよ。』

絵梨香は、肩を落として俯いた。

もう何も考えたくなかった。

『もう・・・・・帰ります』

『お前は、二度とこの館を出る事はできない』

『え?どういうこと?』

『忘れたのかい?秘密を口外したら消滅すると忠告したはずだよ』

絵梨香は、さっき京香に言ったことを想いだした。


【このカレンダーを使って過去へ戻り、私から駿を奪ったのね】

【せっかく過去へ戻って駿との関係を修復しようとしたのに!

京香が妨害したんでしょ!】

『絶対に口外してはならないと、二度も忠告したのに』

絵梨香は、後悔に苛まれた。

何度も これが夢であってほしいと思った。

しかしなかなか目は覚めてくれそうにない。

少しずつ部屋が明るくなると、

無数の男女のアンティーク人形たちが部屋中に飾られていた。

『この人形たち一体一体には、

心の醜い魂が宿っている。安心しなさい。

お前の望みどおりに表面だけは美しくなれるから』

そう言うと老婆は一体のアンティークドールを取り出した。

巻き毛とビー玉のような大きな瞳、長い睫毛・・・

それは、以前来たときに見た あの 今にも動き出しそうな見事な人形だった。

『そんなこと・・・・私がいなくなったら、警察に逮捕されるわよ』

『間もなくお前の肉体は消滅する。

お前が関わってきた全ての人々の記憶から、お前は削除される。

永遠に、この人形の中で話すこともなく動くこともなく・・・・・・』

絵梨香は力が失っていくのを感じながら叫ぼうとしたが、

もう声を出すことも出来なかった。

『さて・・・

もうすぐお前の友達がお前の落としたメモを見てここへ来る頃だ。

最後に会わせてやるよ』

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