仮面舞踏会【短編二編】
それから間もなく京香が碧の占い館を訪れた。

人形のように美しい女性に案内されると、

ローズベルベットのアンティークチェアーに座った。

『あの・・・・どうしても ある男性との恋愛運を占ってほしくて 

このメモを頼りに ここまで来ました』

女性は水晶玉をじっと見つめた。

『その男性こそが、あなたの運命の人』

『本当ですか?』

『ええ・・・・間違いありません』

京香は嬉しくて胸が熱くなった。

そして、少し離れたチェーストに置かれた美しいアンティークドールに気付く。

『あの人形・・・・とても綺麗』

『ああ・・・あれですか?ドールとしての価値は低いんですよ』

『あんなに綺麗なのに?』

『ええ・・・・・この館のドールたちは皆、価値のないものばかり。

よかったら1000円でお譲りします』

京香はすぐに首を横に振った。

『いいえ・・・いいです。人形は魂が宿るっていうでしょ・・・なんだか怖いわ』

占い師の女性は微笑むと

『どうぞ  お幸せに・・・・』

『ありがとう』

京香は、お金を払うと、もう一度人形を見た。

巻き毛とビー玉のような大きな瞳、長い睫毛・・・

『あの人形・・・・とても悲しそうな表情をしているわ』

京香の声を聞いたのは、それが最後だった。

開け放しのドアから彼女の後姿を見送ると

ガラスの瞳でも 金とダイヤのブレスレットが落ちる瞬間を捉えることが出来た。

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