仮面舞踏会【短編二編】
占い師はカードを捲りはじめた。長い沈黙が続く。

『難しいですね。残念ながら 今のままではあなたのほうが 

相手に会うこともなく逃げてしまうでしょう。

もっと自分に自信を持つことです』

『当たってます・・・確かに会う勇気なんて、

今の私にはありません。しかも自信なんて絶対に持てそうもないし』

『あなたは、とても美しい心を持っている。

ほんの少しだけ 考え方を変えるだけで自信が持てるようになります。

そうすればきっとうまくいく恋愛です・・・・

相手の男性は、とても誠実だとカードが告げています。

出会いを大切にしなさい』

女性は、内心がっかりしていた。

(そうよね・・・・それが私への妥当な返答よね。

こんな冴えない私には、むしろありがたいかも)

『お嬢さん、信じていませんね』

女性は驚いた。心の中を見透かされているようで、少々身震いがしたのだ。

『正直言うとあまり・・・・

だって この冴えない容姿で自信なんて持てないんです。絶対に無理です。

諦めるしかないみたいですね』

女性はそう言うとため息をついた。

占い師は、袖口の小さなポケットから3cm角ほどの袋を取り出し

女性の前に差し出した。透明の袋の中には小さな赤い錠剤がたくさんは言っている。

『30錠あります。一日一粒、寝る前に飲みなさい。

もちろんあなたの意思ですけれど。』

『この薬は?』

『自信が持てる薬・・・・この薬は即効性があります。

明日の朝起きたら鏡を見てみなさい。

あなたの心が美しい分 綺麗に生まれ変わるはずです』

『美しくなれる・・・・・くすり?』

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